ループの周回数とループの性質

「周回数=2」のループ

「周回数=2」のループ

同じ大きさのループでも、周回数を増やせば、ループ線の総延長はそれだけ延びます。従って、抵抗値も大きくなります。抵抗値は周回数倍になります。
下の図は、長さ10mの6芯ケーブルでループを作ったとき、6芯のうち1つから6つまで増やしていった場合の抵抗値Rとインダクタンス分Lを測定したものです。(線の断面積0.2平方ミリ(直径0.5mm)。接続点の接触抵抗などを含みます。)

長さ10mの6芯ケーブルによる3m×2mのループ

長さ10mの6芯ケーブルによる3m×2mのループ

このように、抵抗値Rは周回数(ターン数)に比例しますが、インダクタンス分Lは周回数の2乗に比例しています。
ループは下のような抵抗とコイルの直列接続の回路と同じ性質をもつと考えられます。ここに流れる電流Iと周回数Nの積に比例した強さの磁界が発生します。

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ループの等価回路

ループの等価回路

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広域遮断周波数

広域遮断周波数

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さて、このとき、上述のように、周回数に対してインダクタンスLの増え方のほうが抵抗値Rの増え方より大きいので、周回数Nを増やすと、高域遮断周波数が低下してきます。同じ電圧でループを駆動していたとすると、この周波数になると電流が1/√2になります。すなわち磁 界強度が1/√2に弱くなります。(上のグラフではこの遮断周波数からLを逆算しました)

長さ10mの6芯ケーブルで1芯ずつ増やした場合

長さ10mの6芯ケーブルで1芯ずつ増やした場合

この図は、一定電圧(2Vpp)で駆動した場合に、ループに流れる電流を測定し、電流と周回数の積を縦軸として表示したものです。高周波になると電流が 減っていることがわかります。電流が減るということは磁界が弱まるということです。周回数Nを増やすと高周波が出なくなる様子がわかります。
この場合、遮断周波数(コーナー周波数)を5kHz以上としようとすると、周回数は2までとなります。

この結果からいくつかのことがわかります。

  1. 周回数を増やしても磁界の強さは変わらない。
    周回数に比例して抵抗値が増えるので、電圧が同じなら電流は反比例して少なくなりますが、その分、周回数が増えているので、結果として「電流x周回数」は変化しません。すなわち発生磁界の強度は変化しません。
  2. 周回数に反比例して高域遮断周波数が低下する。
    インダクタンスは周回数の2乗に比例するので、周回数を増すと高域特性が悪化する。アンプに電流供給能力があるなら、周回数は少ないほうがよいです。
  3. 線の抵抗値が高いほうが高域遮断周波数は高くなる。
    同じ形状(大きさ、周回数)のループならインダクタンスは同じなので、抵抗値が高ければ遮断周波数は上がることになります。線の太さが変わると、抵抗値は変わりますが、インダクタンスはほとんど変わりません。
  4. 以上より、可能ならループは1周とし、1周で抵抗値が4~8Ωとなる線を用いるのがよい・・・ということになります。
    周回数が多い場合は、抵抗値を高くすると周波数特性の側面からはよいですが、出力電圧の高いアンプが必要です。直列に抵抗を入れても同じ効果があります。これは、なるべく定電流駆動にしている・・・と解釈することもできます。

通常の大きさのループでは、十分な音量を得るには、1.5~2Aターンくらいが必要です。
2A以上の電流供給能力があるアンプであれば単線のほうが周波数特性の点で有利です。
20W(4Ω)のアンプは、√(20/4)Aすなわち2.2A程度まで流せますので、単線で大丈夫である計算になります。
余裕をみれば2芯でもよいかもしれません。

また、ループの周波数特性と実際の聞こえ方の対応は個人差もあり、一概に言えないところもあります。
もちろん、受信側の回路の周波数特性の影響もあります。