分布型光ファイバセンサ業界の現在と今後に関して所見を述べた解説記事が、光学 の「光学ハイライト」に掲載されました。

水野洋輔、中村健太郎, “分布型光ファイバーセンサーの最新展開と課題,” 光学, vol. 48, no. 7, pp. 32-36 (2019).

 ビルやトンネル内壁、橋梁やダム、パイプライン、さらには飛行機の翼や風車の羽根など、高度経済成長期に建設されたインフラなどの経年劣化や自然災害による損傷が大きな社会問題となっている。そこで、これらの構造物の状態(歪(ひずみ=伸び)や温度、圧力、振動など)を監視するシステムとして、光ファイバーセンサーの重要性が高まっている。
 光ファイバーセンサーは大きく、単点型・多点型・分布型の3種類に分類される。単点型は、光ファイバー端面など、光ファイバー上の一箇所でのみセンシングができる方式である。多点型は、光ファイバーに沿った複数の箇所でセンシングができる方式であり、典型例として、複数のファイバー・ブラッグ・グレーティング(FBG)による計測が挙げられる。これらに対し、分布型は、光ファイバーに沿った任意の位置でセンシングができる方式である。3つの方式はそれぞれ一長一短であり、どの方式が絶対的に優れているというものではないが、本稿では、計測の「死角」がないという意味で大きな利点を有する分布型の光ファイバーセンサーに注目する。
 分布型光ファイバーセンサーの動作原理となりうる光の散乱現象としては, レイリー散乱やラマン散乱、そして、ブリルアン散乱が知られている。レイリー散乱を用いた分布センサーは、人間の指紋のような散乱パターンが歪や温度に比例して波長シフトすることを利用したものが多い。米国Luna社を中心に開発が進んでおり、mmオーダーの空間分解能、かつ、高い歪・温度分解能での測定が実証されている。現状では、測定レンジが比較的短いこと(数10 m程度)と装置が極めて高価であることが課題である。一方、ラマン散乱を用いた分布センサーは、その反射パワーが温度に依存することを利用するものが多い。多くの国内外の企業が開発を進めており、例えば、横河電機株式会社は、測定レンジ数10 km、空間分解能1 mで、高い温度分解能を有するシステムを製品化している(DTSX3000)。しかし、ラマン散乱は歪に対しては顕著な依存性を示さないため、歪の分布測定に利用することは困難である。
 本稿では、ブリルアン散乱を用いた分布型光ファイバーセンサーについて、その基本から最新の展開や今後の課題までを紹介する。