音や光でモノを見る・動かす―超音波と光波を用いたセンサやアクチュエータの研究

中村 健太郎(教授)

KN-port中村 健太郎 (Kentaro NAKAMURA)
knakamur @ sonic.pi.titech.ac.jp

東京工業大学
科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授

電気電子系 ライフエンジニアリングコース
(電気電子系 電気電子コース / 情報通信系 情報通信コース(兼任))

社会の実在するさまざまな問題に積極的に興味をもちながら、
それに具体的な解を与える方法をいろいろな角度から検討する。
一方で、その過程の中で問題の エッセンスを抽出し新しい学問に昇華させる。
その成果を次の時代の基盤になるように発展・体系化させる。これが理想としてめざす研究スタイルである。

Suzukakedai-campus, April 2011

Suzukakedai-campus, April 2011

専門分野

  • 超音波工学
  • 音響工学計測

キーワード

パワー超音波、強力超音波、超音波モータ、超音波アクチュエータ、圧電デバイス、新規音響材料 超音波トランスデューサ、超音波計測、光音響デバイス、音場計測、アコースティックイメージング 光ファイバセンサ、光ファイバ型超音波デバイス、光計測

研究内容

光波や弾性波などを用いることで、他の方法では実現し得ない特徴を有するデバイスや計測手法、さらにはそれらが協調・融合したシステムの研究を行っている。

パワー超音波

超音波振動は振動振幅は数ミクロン以下、大きくても数10ミクロン程度だが、周波数が高いため加速度や応力が非常に大きい。
このため、切削加工、塑性加 工、プラスチック接合や、洗浄、乳化、化学反応促進など広い工業的応用がある。
パワー超音波(強力超音波)技術は戦後の工業復興や高度成長期のハイテク産 業を下支えして来た。
当講座は、実吉純一教授、森榮司教授、上羽貞行教授の流れをくむ講座で、必要な周波数、必要な強度の超音波を必要な場所に届けるための振動系の設計を得意としている。
振動系の高周波化、大規模な振動系の系統的な設計法の確立などがこの分野の課題である。
また、わが国の産業構造の変化に伴ない、新しい応用先も生まれつつある。

超音波アクチュエータ

超音波振動でロータやスライダを擦って動かす超音波モータは体積当たりの発生力が大きく、電磁ノイズが小さい、応答が速いなどの特徴があり、カメラや測 定装置などに使われている。
自動車電装品やプリンタなどの機器への応用も検討されてきている。
本研究室では、超音波モータの根本的な性能改善のための検討 や各種実用化研究を行っている。
特に大トルク回転型、大推力リニア型、多自由度型の研究を行ってきた。
一方、超音波の放射力により非接触で大きなガラス基板を搬送するシステムや浮上式ステージの開発を行っている。
また、小さな物体や液滴を非接触搬送するシステムの検討を行っている。
液体や気体を超音波の放射力や非線形効果で移送したり、ポンプ効果を起こすデバイスを開発している。
機械的可動部分なく液体や気体を流動させることができる。

圧電デバイス・新規音響材料

ポリ尿素樹脂という蒸着重合法により成膜可能な圧電材料を用いて高機能な超音波トランスデューサを実現する方法を検討している。
また、シリカナノフォームというナノメートルオーダの多孔材は音速が100m/sと極めて小さく、光との相互作用が大きい。
これを用いた低周波音響光学デバイスの検討を行っている。
シフト周波数1MHz以下のヘテロダイン干渉計を実現した。
医用超音波画像の改善をめざして広帯域な超音波トランスデューサを多共振構造で実現する方法の共同研究を行っている。
パワー超音波用材料の評価法や新しい材料についても検討している。

超音波計測・光計測

超音波と光の両方を用いた計測の検討を行っている。
光ファイバを超音波振動させる高速・大偏向角の光スキャナを検討している。波長掃引半導体レーザ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)内視鏡プローブ などに応用している。
また、光ファイバに超音波振動を起こすことで長周期グレーティングを形成する波長可変光フィルタを検討している。
これら光ファイバ型 デバイスをさらに高機能化、微細化するために、光ファイバと圧電材料との融合法が今後の検討課題である。
また、超音波放射力で被測定対象を変形させ、その変形量をOCTで測定する光コヒーレンスエラストグラフィの検討を行っている。
以上のように、複数の波動現象を用いて行う測定を「波動パラメトリクス」と定義して、体系化をめざしている。
医用超音波で行われている、2次高調波で画 像化するハーモニックイメージや、光励起超音波を測定する光音響測定も、この波動パラメトリクスの概念で包含できる。
光のブリルアン散乱による測定、超音 波エラストグラフィなどもこの範疇に繰り込むことができる。

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波動パラメトリクスの概念

また、音場の可視化(イメージング)も大きなテーマである。光学的な手法による音場可視化法を提案している。音場による光の屈折率の変化を光学干渉計で検出する方法などがある。

光ファイバセンサ

光ファイバ自体をセンサと信号伝送路の両方に用いる光ファイバセンサは、光ファイバに沿って、どこに何か起きているのかを知ることができる分布型センサである。
光ファイバに光を伝搬させると、レーリー散乱、ブリルアン散乱、ラマン散乱などによる微弱な光が戻ってくる。
この性質から光ファイバに加わったひ ずみや温度を知ることができる。
場所は光パルスの伝搬時間、周波数変調した光を用いる方法、光のコヒーレンスを制御する方法がある。また、ファイバグレー ティングなど特殊なファイバを用いる方法がある。

本研究室では、超音波や音を光ファイバで測定することを検討している。
また、ポリマーファイバ(プラスチックファイバ、POF)のセンシングへの応用を積極的に進めている。
POFはシリカファイバに比べて取り扱いが容易で、土木・建築分野への応用に適していると考えられる。一方、POFに一定以上のひずみを加えると、ひずみや応力を除いた後も、その痕跡を光学的に検出できることを見出した。
これはセンサ自体が変形情報を記憶していると考えることができ、メモリ機能のあるファイバセンサが実現できる。
例えば、家屋などに POFケーブルのみを敷設しておけば、地震の後で検出装置を持っ巡回検査することで、家屋のダメージを評価するような使用法が想定される。
一般に検出装置 が高価であるためファイバセンサの導入は小規模建造物には難しかったが、この方法によれば安価なケーブルのみで済むし、測定時に電源が不要である。
最近、POFのブリルアン散乱の測定に成功し、より高度な計測を行える可能性が出てきた。

聴こえ支援プロジェクト

聴力の低下を補う支援機器、システムを検討している。
関係NPOと連携しながら東工大ソリューション研究機構のプロジェクトとして研究を行っている。
特にヒアリング・ループ(磁気誘導ループ)の活用と普及方法を検討している。

所属学会

  • 電子情報通信学会(シニアメンバ)
  • 日本音響学会
  • 応用物理学会
  • 電気学会
  • IEEE-UFFC

学会委員等

  • Technical program committee member of International Conference on Optical Fiber Sensors(OFS)
  • Technical program committee member of International Ultrasonic Symposium, IEEE(IEEE-IUS)
  • Working group member of ISO/TC 108/SC 5
  • Vice-chair, IEEE UFFC Tokyo Capter
  • 日本音響学会副会長(~2011.5)
  • 応用物理学会 光波センシング技術研究会 常任幹事
  • 超音波エレクトロニクス運営委員・論文委員
  • 電子情報通信学会、日本音響学会ほか、査読委員

著書

  1. S. Ueha et al., “Ultrasonic Motors, Theory and applications,” Oxford University Press, 1993(分担)
  2. 日本音響学会編(6名共著) 「音のなんでも小事典」 講談社ブルーバックス 1996(分担)
  3. 中村健太郎 「図解雑学-音のしくみ」 ナツメ社 1999
  4. 鈴木陽一他 日本音響学会音響入門シリーズ 「音響学入門」 コロナ社 2011(分担)
  5. 藍光郎監修,「次世代センサハンドブック」 培風館 2008(分担)

他 電子情報通信学会、電気学会、機械学会等 ハンドブック、便覧等分担執筆 7件

受賞等

  • 日本音響学会粟屋潔学術奨励賞(平成7年)
  • 電子情報通信学会論文賞(平成10年)
  • 応用物理学会JJAP編集貢献賞(平成18年)
  • 超音波エレクトロニクス論文賞(平成18年)
  • 日刊工業新聞 第5回 モノづくり連携大賞 特別賞(平成22年)

About:

Kentaro Nakamura was born in Tokyo, Japan, on July 3, 1963. He received the B.Eng., M.Eng., and D.Eng. degrees from the Tokyo Institute of Technology, Tokyo, Japan, in 1987, 1989, and 1992, respectively. He has been a professor of the Precision and Intelligence Laboratory, Tokyo Institute of Technology, since 2010. His field of research is the application of ultrasonics and the measurement of vibration and sound using optical methods as well as fiber optic sensors. He received the Awaya Kiyoshi Award for encouragement of research from the Acoustical Society of Japan in 1996. He awarded the best paper awards from the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers in 1998 and from Ultrasonic Elecronics in 2007, respectively. He received the JJAP editorial contribution award from the Japan Society of Applied Physics in 2007. Dr. Nakamura is a member of the IEEE, and has been the vice president of the Acoustical Society of Japan since 2009.

Education:

1986-1989 Faculty of Engineering, Tokyo Institute of Technology Awarded the degree of B. Eng.
1989-1990 Department of Applied Electronics, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology Awarded the degree of Master of Engineering
1990-1992 Department of Applied Electronics, Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology Awarded the degree of Doctor of Engineering for a thesis entitled “A design of hybrid transducer ultrasonic motor.”

Professional experience:

1992-1993 Research Associate at Precision and Intelligence Laboratory, Tokyo Institute of Technology
1993-1996 Assistant Professor at Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology
1996-2009 Associate Professor at Precision and Intelligence Laboratory, Tokyo Institute of Technology
2010- present Professor at Precision and Intelligence Laboratory, Tokyo Institute of Technology

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