中村教授 の解説記事が 軽金属 に掲載されました。

中村健太郎, “超音波技術,” 軽金属, vol. 67, no. 12, pp. 634-640 (2017).

超音波は周波数の高い音波のことであり,ひとの聞くことができる上限と考えられている20 kHz を超える周波数の音のことを指すのがふつうである。しかし,実際には20 kHzよりも低い周波数の音も超音波と称して利用されることがあるで,「聞くことを目的としない音」と定義されることもある。ひとの耳に直接働きかけること以外の音波利用が超音波であるというわけである。また,空気中や液体中の「音」のみではなく金属などの固体中の「振動」も超音波である。音は体中の圧力変化が伝わる波動であり,伝搬する方向と媒質の振動方向が一致する「縦波」である。固体中を伝わる振動の場合は,この縦波に加えて,振動方向が伝搬方向と直交する横波も存在する。細棒や薄板の場合はむしろ横振動のほうが起きやすい。横波の場合,振動方向が物体の表面に垂直な場合と水平な場合で性質が異なる,縦波成分も伴うことがあるなど,固体の振動は複雑である。
本稿では,超音波の性質とその応用に関して,計測応用とパワー応用について概要を述べる。計測応用では,超音波が電波や光が伝わりにくい水中や固体中でよく伝わることが大きな特徴となっている。また,電波や光に比べると伝搬速度が5 桁以上小さいので,低い周波数でも分解能の高い測定ができる。低周波数で済むということは,送受信や信号処理の電子回路が低価格になることを意味している。また,パワーの利用では非常に大きな音圧や強力な振動を用いて,洗浄,乳化,化学応用からプラスチック接合,ワイヤーボンディング,切削加工,塑性加工など広い範囲の工業応用がなされている。